2015年11月5日木曜日

変わって苦しみ、変わらずに苦しむ

先日、1通のメールを、塾生のお母さまから頂きました。

このお母さまは、東日本大震災で、大打撃を受けた街のひとつ、ご存知、陸前高田市に、旦那様の仕事の仕事関係で行ったそうです。

この”何の飾り気の無い”メールを読んで、僕は、何故か、心が釘付けになりました。
皆様もぜひお読み下さい。 (原文のまま紹介します。)

ーー
塾超様

**の母です。

(略)

話は、変わりますが、添付の写真は奇跡の一本松です。


主人が仕事で陸前高田市の復興住宅に携わるので、その打ち合わせに
土曜日に日帰りで行ってきました。

私は、主人の打ち合わせ中、うろうろしていたのですが、そのとき見たこと、
感じたことをお伝えしたいと思います。お時間があるときにお読みください。

陸前高田は広い範囲にわたって被害にあい、海の近くは何もありません。
今あるのは、山から切り崩した土砂を運ぶベルトコンベヤーが地上15Mあたりにあるだけです。

その下をトラックが行きかい、一本松を見に来た人が歩いています。
4年たっても復興には程遠い感じです。

それでも、トラックが通る埃っぽい道路脇の草を刈り、花壇にしようとしている団体が
いました。これから寒くなるし、埃もかぶるし花は咲かないんじゃないかとも思いますが、その人たちは復興を信じ、一歩一歩前に進もうとしていると感じました。


お昼ご飯は大船渡市に行きました。
プレハブ小屋で営業しているお寿司屋さんです。

被災直後に営業を開始した時にはきっとプレハブでも営業できてよかった。
うれしいと思われたと思います。
でも、今は、いつまでプレハブなんだろうとこちらが心配してしまう状況です。

昼は閑散としていましたが、夜は仕事を終えた人たちで満席になるようです。
(10席程度ですが)
 
近くの岬に行ってみました。


海が青くてとてもきれいです。
この海が猛威を振るって人々を飲み込んだとは考えたくありませんでした。

観光客は誰もいません。 私一人です。

遠く離れて暮らしていると分からないことが沢山あるということが分かりました。

政治家の人たちも、一般の人たちも一度来てみて欲しいと思います。


以上、長くなりましたが、塾超にお伝えしたいと思いましたのでメールしました。

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ありがとうございます。
いかがでしょうか?

淡々とした文章から、何か「静寂の圧力」のようなものを感じます。

”奇跡の一本松。単に誰かがつけた名前なのでしょうが、本当にその勇敢にそびえ立つ姿は奇跡のようですね。この写真にも感動してしまいました。きっと、目の前で見たら、凄いのでしょうね。(ぜひ、画像を大きくして見てみて下さい。)

このように、人はとても「敏感で感傷的」なくせして、いかに「鈍感な動物」であるかもわかります。その場に行かないと、臨場感は薄れ、すぐに嘆いた事さえ忘れてしまい、すごく鈍感になってしまうのです。

4年前の事の記憶はあっても、その時の哀れみの感情など、もう忘れかけている人は多いのではないでしょうか?
人間の性ですので、それが何だということを言ってるのではなく、人の立場や気持ちになるというのは、その状況に自分を(意識的に)落とし入れない限り、到底無理だというこでもあるのです。

たとえ「どうして私の気持ちがわからないの!」と相手に怒鳴っても、それは、無駄ということです。”私はあなたではない”からです。。。

とても当たり前の事ですが、多くの人が、自分の事を他人に分かって貰おうと、苦しんでいるのを見かけますが、単なる「独りよがり」だという事です。
到底無理な事なのです。とても気をつけなければならない事です。

唯一、人の気持が分かるのは、自分が同じ状況に置かれた場合や、自らその状況を経験した場合に限るわけです。

この変わらぬ状況を、人に本気で知ってもらうなら、もうそこに行ってもらうしか無いわけです。行かなければ何も始まらないし分からない、ということですね。
お母さまが言うとおり、そこに行って空気を感じ臨場感を得るしかないのです。

もうひとつ、このメールで思い出した事があります。
それは、人には、2つの同じようで逆の苦があるということです。

・何かが変わってしまう事に苦しみ悩む。
・何かが変わらない事に苦しみ悩む。

文の中に、お寿司屋さんが、すべて流されてしまった場所でプレバブでも営業をした、でも、4年経った今でも、きちんとした店を復活出来ないでいる、いつ迄そのままなのだろう。。
 という箇所がありました。

まず、「津波ですべてを失った(変わってしまった)時」に、本当に苦しんだ事でしょう。
そして、プレハブで営業して、ちょっとの幸せを得ましたが、今もそのまま(変わりない)で、また悩み苦しんでいるのかもしれません。


この場合は、震災での苦しみからですが、震災でなくとも、「変わってしまって苦しみ、そして変わらずにまた苦しむ。」と言うことは、僕達の普段の生活でも、至る所によくあることです。


人間とは、不思議な生き物ですね。
頂いたメールと写真から、いろいろな思いが過ぎって行くのでした。


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